2012年4月26日木曜日

日刊デジクリ[#3256] 選ばなかった選択

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.3256    2012/04/26.Thu.14:00.発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 10041部
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          《いまではすっかり対比フェチ》

■わが逃走[104]
 アジトの思い出 の巻
 齋藤 浩

■電網悠語:HTML5時代直前Web再考編[189]
 選ばなかった選択
 三井英樹

■ローマでMANGA[51]
 イタリアがMANGAを「発見」した頃
 midori

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■わが逃走[104]
アジトの思い出 の巻

齋藤 浩
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20120426140300.html >
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こんにちは。前回の写真がことのほか好評だったので、一緒に出てきたネガを
スキャンしつつ、今回はさらに狭く深い話題をひとつ。

1980年代、私が中学生の頃だった。S玉県O宮市郊外を散歩していた際、妙に気
になる物件と出会ったのだ。

周囲には田んぼ以外これといったものもない。大抵の人なら気にもとめずに通
り過ぎてしまうような場所に、溶接や旋盤加工なんかをする作業場のようなも
のが建っていた。

いつ行っても誰もいないが、朽ちていく様子もなく、廃屋のようではあるが、
現役のようでもある。トタン板の建家の外には錆ついた機械やドラム缶等が放
置されており、それらを覆うように雑草が群生している。

とくに理由はないが、なんかイイ。私はその物件を『アジト』と名付け、学校
の帰り道にちょっと遠回りしては眺めたりしてたのだった。

数年後の春、高校生の私が久しぶりにアジトへ行ってみると、敷地全体にだい
こんばなが咲いていた。基本的に花に興味のない人生を送っている私であった
が、錆ついた機械とのコントラストに心引かれ、家から一眼レフを持ち出して
何枚か撮影した。
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig1.jpg >

そしてたまたま近所に住んでいたユキオ君が通りかかったので、「ジャケ写っ
ぽく撮ってやるぜ」とか言って撮影したのがこれ。
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig2.jpg >

クラフトワークをはじめとするテクノミュージックでロシア構成主義を知った
私は、とにかく歯車と人をからめて撮りたくてしかたなかったのだ。

アジトの壁
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig3.jpg >

当時の私の美の基準はこれだった。どんな抽象画より美しい! と本気で思っ
ていたし、今もわりとそう思っている。錆とペイントとの調和が見事。右下の
数式らしき落書きも効いてる。

そして錆びたボルト!
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig4.jpg >

当時の私の美の基準は、YMOのアートディレクションであった。YMO散開記念写
真集『SEALED』に触発されて、こんな写真をたくさん撮った。

さらに数年後の初夏、ムサビにおける写真の授業で「何でもいいから撮って来
い」という課題が出たので、早速アジトを撮ることにした。ちょうど、前回紹
介した写真と同時期のものになる。約23年前の記録。使用したフィルムはトラ
イX、カメラはα7000だったと思う。

電気のメーター。
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig5.jpg >

アジトの壁面に発見した瞬間、YMOにそっくりだ! と思った。なんの変哲も
ないメーターをいかに人物っぽく印象づけるか? なんてことを考えながら、
いろんな構図で撮った。思えば、20年以上も同じような写真を撮っている。

白い花
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig6.jpg >
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig7.jpg >

花には興味がなかったが、背景に錆びた金属がある場合は別。硬いものと軟ら
かいもの、人工物と自然物など、対比の面白さに興味を覚えたのもこの頃。い
まではすっかり対比フェチになってしまった。

プロパンガスの頭
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig8.jpg >

モビルスーツ! と思ってシャッターを切った。先日、20年ぶりにこの写真を
見たときも、モビルスーツ! と思ったのだった。

謎の機械
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig9.jpg >
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig10.jpg >

歯車とハンドルがカッコイイ! 動きを想像させる構造美と、無秩序に生い茂
る植物との対比。

というわけで、アジトをご紹介しました。最近このあたりがどうなっているか
は知りませんが、おそらく周囲の田んぼは埋め立てられて、この建物も敷地も
もうなくなっていることでしょう。

最後にアジトの全景をおみせします。こうして見ると、どこにでもありそうな
場所なんだけどね。
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2012/04/26/images/fig11.jpg >

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられ
ないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィ
ックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。

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■電網悠語:HTML5時代直前Web再考編[189]
選ばなかった選択

三井英樹
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20120426140200.html >
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米国TV番組「Flashforward(2009〜10年制作)」。世界中で全人類が同時に
2分17秒間意識を失い、それぞれ自分の6ヵ月後の姿を目撃する。未来を見てし
まった人と見なかった人のその後の物語。そこに気になるフレーズがある。

   選ばなかった選択
   (─過去に起こりえたことはすべて他の宇宙で起きている)
    Flashforward 第10話
    < http://amzn.to/IRNFDU >
    < http://www.hulu.jp/flash-forward > (第1話は無料)

ドラマの中では、量子力学的な話が加わり、より取っ付き難くなっている。し
かも、ドラマ自体に完結編がなく、中途半端に打ち切られていて、打ち切られ
なかった選択肢がどんなものだったのか色々と考えさせてくれるドラマだ。

そもそもMacromedia Flash系のイベントと同じ名だから気になったドラマなの
だが、膨大な費用をかけて作られた第1話は見て損はないかと思う。

   ▼エヴェレットの多世界解釈 - Wikipedia
   < http://bit.ly/doFtFt >
   ▼多世界解釈。←これ位の情報量が好きw
   < http://shigekifactory.com/blog/?p=1125 >



この「選ばなかった選択(肢)」を過疎の村(正確には合併して「町」)で考
えている。人口カバー率99%を誇るWillcomも圏外となる地域ではあるが、道
路の整備もよく、山奥でもない。陸奥湾が目の前に広がる穏やかな場所。でも
確実に過疎が進んでいることを、訪れる度に実感する。この地域にある小学校
の新一年生は3名だという。

3.11の影響を直接受けた訳ではない。しかし、例えば50年後のこの地域を考え
ると、深刻な状況にあるとしか言いようがない。「震災がなくてもこの村は長
くは続かない…」という、ある被災地支援者が言った台詞を思い出す。

そして、不謹慎な50年後を考える。仮にこの村が消滅するような事態になった
としたら、近隣のより小さな村も恐らくは既になくなっていて、この海岸線一
帯は人の営みのない地域になってしまっているだろう。

それが延々と続くとしたら、少々背筋が寒くなる。単なる郷愁とかではなく、
延々と人のいない道が続いているのを想像すると何とも言えないそら恐ろしさ
を感じる。



どこかで別の選択肢があったはずだ、と考える。この過疎化の進行を停める策
があったのではないか。深く考える程の知識も情報もないので、漠然とだが考
える。どこかで道を間違えたのか。それとも、こうなるのが必然なのか。

「村から出ては生きて行けない」と高齢者の方が言う。被災地での葛藤と同じ
ものが、此処でもただ静かに沈殿して行くように響く。「やっぱり自分の家は
落ち着く」と帰宅を許された方々の声をテレビで見聞きする度に、何かが引っ
かかる。昔と同じにするのは無理だろうと諦めが先に立ちつつ、今残された選
択肢は何なのだろうと考える。

結果的に過疎化を防ぎ切れなかった施策も、原発を建てた選択肢も、考える段
階では対案があったはずだ。考えつかなかった場合もあるだろうが、選ばれな
かった選択肢が皆無ということはあり得ない。それら消えて行った選択肢に乗
っていたら、今はどうなっていたのだろう。

人が都市部に集中しすぎることなく、人も仕事も文化も日本全国に分散/共存
し、多様性を維持しつつ豊かな地域社会が存続するような未来はあり得たのだ
ろうか。



故郷の地への愛着が強い世代がいて、薄い世代がいる。世代で線引きができな
いものかもしれないけれど、少なくとも今の私にはそうした執着はほぼない。
大阪で生まれ、今は横浜に住んでいるけれど、何処ででも生きられるような気
もする。今の家も子供たちが独立したら、こだわる必要もない。

私はデジタル・ネイティブではないけれど、リアルの繋がりを補うものを、ネ
ット側にある程度知っている。ネットがまったくない世界に、今から行けるか
と問われれば厳しく思うだろうけれど、そうでない限り何とかなるだろう。

そんな想いを多少込めて、この地の人へIT紹介をする。でも一蹴される。iPad
もiPhoneも、「震える指でそんなもの触れるか」と笑い飛ばされた。震える指
で操作してたらカッコイイけどね、と付け加えられながら。ITは無力だ。生活
の支援はできるかもしれないけれど、高齢者の生活の主軸には役不足だ。

でもあと少しすると、私の指も震えていくのだろう。それが10年後か20年後か
は分からないけれど、いずれ細かい作業ができない時はくる。その時までにも
っとUIが進歩してもらわなくちゃ困る。そしてその時には、私も郷愁をもって
住んでいる場所を見つめるのだろうか。それとも執着がないのは、そうした移
住的なものが容易に進むための準備なのだろうか。



選ばれなかった選択(肢)を気にするのは正常ではないのかもしれない。単に
選ばれなかったのだから、あり得ないものなのかもしれない。でも何か事が起
きた時に、もっと何かができただろうと後悔の念にとらわれるように、捨てら
れた選択肢に未練が残る。

3.11以降、この国は未だ揺れ続けている。地面だけじゃなく、様々なものが揺
さぶられている。せめて、つまらない理由で有意義な選択肢が捨てられないよ
うに、目を凝らしていなければならないのだろう。そしてもっと使い易いITを、
もっと高品質なユーザビリティを、よりよいデバイスを工夫して行かなきゃな
らないのだろう。道は遠い。

【みつい・ひでき】@mit | mit_dgcr(a)yahoo.co.jp
 < http://www.mitmix.net/2012/04/189.html >
・Adobe CS6、Google Drive、でましたねぇ。Windows8、見えてきましたねぇ。
激動継続中という感じをヒシヒシと感じます。
・SkyDrive既存ユーザは25GBまであげられます、放っておくと7GB。

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■ローマでMANGA[51]
イタリアがMANGAを「発見」した頃

midori
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20120426140100.html >
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●日本のアニメの上陸

私がイタリア旅行をしている間に、この国では日本のアニメのテレビ放映が始
まっていた。記念すべき第一弾は永井豪の「グレンダイザー」。1978年(昭和
53年)、私の最初のヨーロッパ旅行の年に放映が始まったわけで、イタリアで
の新しいマンガ月刊誌発刊といい、もう、私とイタリアとマンガとMANGAとア
ニメの深いご縁を感じないわけには行きません。

ちなみにこの年、イタリアの首相アルド・モーロが誘拐・暗殺され、法王パウ
ロ六世が死去。選出されたヨハネ・パウロ一世が在位33日で死去し、455年ぶ
りのイタリア人ではないポーランド出身の法王ヨハネ・パウロ二世が選出され
るという、イタリアにとっても怒涛の年だった。

1978年に始まった日本のアニメ「グレンダイザー」はたちまち子供たちの心を
掴み、翌年には「マジンガーZ」、そのまた翌年には「キャンディ・キャンデ
ィ」が放映され、いずれも今までにないヒット作になった。

イタリアで、こんなに子供たちが熱狂したアニメは今までなかった。そりゃそ
うですよ。それまで日本のアニメがなかった、つまり、感情移入できる作品が
なかったのだから。

なぜ日本のアニメがイタリアで放映されるに至ったのかは知らない。子供たち
がイタリア中で「なんたらパ〜ンチ!」と唱えては攻撃するようになったので
びっくりした。世間では「日本はコンピュータで作るからアニメが安く出来る。
だから放映権も安いのでテレビ局どんどん買ってるんだ」と囁かれた。

当時、アニメーションソフトを持つコンピュータなんか、アニメスタジオで使
ってませんって。日本=技術、絵を動かす=機械がやる(人が描くわけがない)
という短絡思考の賜だ。当時は日本といえば、なんだか小さな体の黄色いサル
たちが四六時中働いている…というイメージだったように思う。

旅行中に「日本に電話はある?」とか「日本? ああ、香港?」とか聞かれた
りした。日本に対する知識、認識が殆どなかった。ソニー、ニコン、ホンダは
あったけど、日本の会社だと知ってる人はあまりいなかったように思う。

1982年(昭和57年)、後に大ヒットする「ベルばら」の放映が始まった年、イ
タリアでちびっ子向けの雑誌を作っていた出版社が、売上を上げるためにはア
ニメから取ったMANGA(アニメコミックスとかフィルムコミックスとか呼ばれ
る)ものを掲載するのがいい! というアイデアを得て、講談社にコンタクト
をとった。アニメコミックスなどというのは多分日本特有のものだと思うけれ
ど、そこへ目をつけるなんて、この編集長、盛んに勉強したと見える。

なぜ他のアニメコミックスを出している出版社ではなく、講談社に話を持って
いったのかは、どうしても「私とイタリアとマンガとMANGAとアニメ」をつな
げようとする運命の神様の操り糸に導かれてのことだと思うが、少年マガジン
編集部から講談社KC(単行本を扱う部署)へ移っていた阿久津さんから、ミラ
ノの出版社へ行くので通訳として来てくれないか、との連絡を受けたのだった。

通訳なんてしたことがない。仕事の話をするのに語彙が大いに不足してる。そ
れでも阿久津さんは、いわゆる本職の通訳家より、MANGAのことを知ってる人
の方が話がツーカーに通じるのでありがたい。言葉が足りない分は、相手のい
うことがわからなかったら聞き返す勇気を持ってくれること、本職ではないの
でと相手にも断って、辞書を使っても良い、と言ってくれてやってみる決意を
した。

ミラノには当時、イタリア全国規模の大きな出版社が二社あった。ちびっ子雑
誌「corriere dei piccoli(コリエレ・デイ・ピッコリ)」の編集長はそのう
ちの一社。

編集長はものすごい熱意で、アニメコミックスを掲載したい意思を説明した。
子供たちにとってはテレビで見るアニメのキャラクターが本物であり、たとえ
MANGAが原作であっても、テレビで見るのと少しでも違うと本物ではないと認
識する。抗議の手紙を受け取ったりするので、アニメコミックスを掲載する必
要がある。

阿久津さんが「アニメコミックスは著作権が複雑だから…」と難色を示しても、
「一件づつ解決していくから問題ない」と強気だった。

この件で私が関わったのは、この講談社とリッツォーリ社の初めての会見だけ
で、どのように話が進んだのか承知はしていない。でも、後に講談社が発行し
たアニメコミックスが掲載されていたので話は結実したわけだ。

●MANGAの発見

同じ年、私は関わっていないけれど、アニメで大ヒットした「キャンディ・キ
ャンディ」のMANGAがイタリア語版で出版された。これは、アニメの原作に
MANGAがあって、そのMANGAも面白い、というMANGA発見の先駆けになった。女
の子に受けて、MANGAだけでなく同名の雑誌には女の子が喜びそうな記事が載
っていた。

翌年、もう一度阿久津さんがイタリアを訪れ、私はまた通訳をする機会を得る。
フィレンツェの近郊都市ルッカで行われるコミックスフェアに、講談社が招待
を受けたのだ。阿久津さんは国際室に異動になっていて、その室長と一緒にイ
タリア視察を兼ねてやって来た。

招待といっても「いつからいつまでこういうフェアがありますので、よろしか
ったらどうぞ」というお知らせであって、ゲストとしての招待ではない。旅費
やら宿泊やらフェアの主催者が払うわけではない。それでも、「コリエレ・デ
イ・ピッコリ」でMANGAの縁がついたイタリアだから、今後のためにも視察を、
というとても日本企業らしい考え方で出張を決めたらしい。

講談社は、ボローニャで毎年開催される「国際児童図書展」には必ずブースを
出しているので、イタリアには縁が深い。ボローニャでは絵本の取引が主だか
ら、これでMANGA発行でも縁ができるかも、と思ったのかもしれない。

「キャンディ・キャンディ」がアニメとMANGAでヒットしても、マンガ市場が
小さいイタリアだから、国際室(後の国際版権)の思惑とは大いに差があった
と推測する。

フェアにはMANGA色が殆どなく、イタリア、フランス、スペイン、アメリカの
新旧コミックスの祭典だった。今から見ると信じられない風景だ。実際、もう
このフェアには来る必要ないね、とお二方は話し合っていた。

「キャンディ・キャンディ」の熱狂はそれまでなかったことという意味で、イ
タリアのマンガ界を騒がせたが、市場から見れば一部のものであり、出展者の
ほとんどはMANGAに関してまったく知識を持っていなかった。この「一部の熱
狂」がどういうことなのか理解してなかった、とも言える。

古本のブースで「お手持ちのコミックス買います」の張り紙があるところで、
阿久津さんが試しに「キャンディ・キャンディ」の単行本(もちろん日本語)
を差し出してみたら、ブースのおじさんは苦笑いをしながら首を横に振った。

この10年後のMANGAブームで、マンガに関わる誰もがMANGAを無視できなくなっ
た時、このおじさんはホゾを噛んだろうか…と時々考える。

イタリアにおける「キャンディ・キャンディ」の特異性として、話が完結した
後、発行していたファッブリ・エディトーリ社は続編を小説として刊行する。
作家はイタリア人で、この許可を得るのに講談社に打診し、講談社は作者の水
木杏子といがらしゆみこをイタリアに招待してくれという条件をつけた、とい
うのが微笑ましい。

その後ファッブリ・エディトーリは、MANGAから離れてもとの百科事典事業に
専念。MANGAに参入する出版社が多くなっていったのと逆行した。このへんの
決定の経緯を知りたいものだ。

こうして日本のアニメのテレビ放映開始で、当時のガキンチョ達はショックを
受けた。そして、日本発ポップアートの洗礼から、MANGAの発見につながって
いった。洗礼を受けたガキンチョ達の中には、小学生だけではなく中学生や高
校生も含まれた。

アニメやマンガが10代の層に影響を与えたということが、後のMANGAブームに
大きく関わっていく。なぜなら、その数年後にこの高校生たちが社会に出るか
らだ。普通の就職ではなく、MANGAという自分の情熱を仕事にしていく者も現
れてくるようになる。

一方、日本では講談社で宮原さんの下で編集を覚えた栗原さんがモーニングを
創刊し、宮原さんは少年マガジンを編集長を退任してヤングマガジンを創刊。
読者の対象を青年に広げていき、少年海外コミックという部署(?)を設けて
(多分お一人で担当)、さらに編集総務局長に就任という変化が起こっていた。
これらが、わたしの活動にもだんだんと繋がっていく。

【みどり】midorigo@mac.com

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/ >

2008年に里帰りした時に、知り合いのマンガ家さんに紹介されてインターネッ
トTVのインタビューを受けて、ビデオも一緒に撮った。ミーハーだから「うほ
ほ、私もメディア出演だわ」とちょっと得意になった。

インタビュー記事はすぐにサイトにアップになったけど、〈働く・仕事〜エン
タテインメント産業(4)コミックエージェンシー山根緑さんに聞く LWAC-TV〉
ビデオはなかなかなアップされなかった。小心者なので、担当者に質問するこ
となく、そのうち生活に追われて忘れてしまった。

で、先日、なんだか検索してて行き着いた。嬉し恥ずかし私のインタビュービ
デオ。
< http://lwac.jp/wmv/manga/yamane.wmv >

光を調整して、祖母、母譲りの私の垂れた顔面皮膚がほとんどわからなくなっ
ている(目の下の頬が垂れ、口元の脇の肉が垂れてブルドックようになる)う
うむ、この調整に手間取ったのかも…と、気を使ってくれた担当者に深く感謝。

日本事情、たまには嬉しいニュースもありますね。

・石原都知事の尖閣諸島購入という発想、いいですね。支持します。「国を守
るならなん国が買わないの」という意見もあるけど、持ち主は政治家不信だっ
たそうで国には売らないといっていたそうで、だから無理です。それに、今の
政府が購入したら、熨斗つけて中国様に献納してしまいそう。

尖閣諸島なんて小さい島、がたがた言うならあげちゃえばいいじゃない、とい
う人もなかにいるようですが、どんな小さな島にも「領海」という概念がつい
て回るのを忘れてはいけない。尖閣諸島には九州の6倍の海がついている。そ
の海を守れないと、都民を含めた日本国民の生活に欠くことのできない資源輸
送が危険になるということ。

不安材料にはことかかないけど。

・新潟に支那領事館というのも危ない。地図を逆さまにしてみるとわかるけど、
新潟は支那から太平洋へ抜ける拠点になる。領事館になったらそこは治外法権。
日本の力が及ばなくなる。チャイナタウンを作って経済活発化、とか支那の旅
行者を誘致して経済活性化とか、目の前の人参に飛びついて後どうなるのか。
落とし穴の方にもよーく目を通して考えてほしい。

新潟だけじゃなく仙台もか。子供のためにパンダ誘致… パンダはプレゼント
ではなくて賃貸し。その費用年間一億とか。そのお金を復興と内需拡大に使う
ほうが先ではないのかな。だいたいパンダはチベットのもので、支那が勝手に
どうこうしていいものではない。

▼ローマでMANGA[15]東京でMANGA
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20081125140300.html >

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編集後記(04/26)

●浅田次郎「降霊会の夜」を読む(朝日新聞出版)。信州の別荘地にひとりで
住む初老の男が、謎めいた女の誘いでミセス・ジョーンズが開く降霊会に参加
する。かつて男と同じ時を過ごした人たちの霊魂が現れ、彼の心の闇の奥深く
ある記憶の古井戸の蓋を開けて行く。忘れたことにしていた暗い記憶が次第に
よみがえる。彼が知り得なかった真実が死霊や生霊によって語られる。最初の
夜に現れたのは、小学3年生の1学期だけの友達キヨとその家族、知り合いの警
察官などだ。彼らの心の内を知ることによって、彼のうちに燻り続けていた悔
悟や罪悪感がきれいさっぱり拭われる。

ところが、二日目の夜、招かれざる客が降りて来る。一番会いたいと念じたの
は、大学時代に半年つきあって、潮時という身勝手この上ない理由で捨てた百
合子だった。しかし、現れたのは……。迷える霊魂の哀切極まる語りは絶品だ。
一人語りさせたら、浅田次郎の右に出る者はいない。それにしても苦くて重い
話だ。

浅田作品には、娘の霊魂が現れる「鉄道員(ぽっぽや)」がある。主人公の悔
悟が救済される、心温まる泣ける話だ。ながやす巧の描いた漫画を持ち出して、
一気に読んでまた泣いた(しかも「ラブ・レター」との2本立て)。しかし、
「降霊会の夜」の主人公の悔悟や罪悪感は救済されたとは思えない。これから
は以前に増して孤独な日々が続くのだろう。もやもやした読後感がいつまでも
漂う。わたしは過去を振り返るのがきらいだ。恥ずることの多き一生でした。
って、まだおめおめ生きてます。                (柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022509503/dgcrcom-22/ >
→アマゾンで見る(レビュー5件)

●齋藤さんの写真好きやわ〜。/SkyDriveを25GBにアップした。今後はもうち
ょっと使いたいな。/イタリアっ子も「なんたらパ〜ンチ!」と言っていたの
か。midoriさんのインタビューは見応えあり。

カブトムシの幼虫。朝起きた時にフンが増えていて、底にいたらほっとする。
フンは作り物のよう。ボトルガムの粒に似ていて、大きさは半分ぐらい。机の
上に置いて合間合間にも生存確認をする。さすが自然の無農薬ファームだぜ、
焦げ茶(土)と白(幼虫)と青(ジップロックコンテナの蓋)に、緑が加わっ
た。草がひょろひょろ〜と伸びてきたよ。家人の会社に、クワガタ生育セミプ
ロがいて、カブトムシのケース(コバエの入らないフィルターつき)をもらっ
てしまった。丸いほうがいいらしい。ジップロックコンテナも丸かったぜ。昆
虫ショップについても教わる。このセミプロは育てるのが好きで、近所の子供
たちにあげたりはするものの、ショップに売ったりはしないそうだ。夜行性の
クワガタに合わせて、夜中に取りに行くツアーがあって、場所を覚えさせない
ために、車の内部にカーテンが吊られているとかいう話も聞いた。うちのマン
ションには広めの植樹エリアがあるので、カブトムシの幼虫をツガイで育てて、
産まれた卵を埋めてやったら自然に育つのだろうか。腐葉土をえさに、成長し
てからも樹液。国産カブトなら生態系を壊すことはなさそうなんだが。

三日前、ゴキブリが死ぬ時のように土の表面でひっくり返っていた。直視でき
ず、死んでしまったと半泣きで家人に電話していたら音がした。動きはじめた。
しかし明らかに弱っている。酸欠なら私の土の管理が悪い。新たに土を買った。
環境が変わってはと、古い土からも一部入れようとふるいにかけたら、出てく
るわ出てくるわ、フンの山。食料が減っていたのと湿度(醗酵しての酸欠)の
せいだろう。土を変えたら、もこもこもこもこと潜っていった。気に入ったよ
うだ。                         (hammer.mule)

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編集長     柴田忠男 < mailto:shibata@dgcr.com >
デスク     濱村和恵 < mailto:zacke@days-i.com >
アソシエーツ  神田敏晶 < mailto:kanda@knn.com >

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