2012年5月17日木曜日

日刊デジクリ[#3261] ヨコハマは呪う

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.3261    2012/05/17.Thu.14:00.発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 10040部
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    《押入れに向かってずずずずずずずずずずずと移動し始めた》

■私症説[37]
 ヨコハマは呪う
 永吉克之

■ショート・ストーリーのKUNI[117]
 ひとみととしお
 ヤマシタクニコ

■more READ, more MESS!![03]
 MESS002 フェルト動物ブローチ作品集「URBAN SAFARI」制作記
 宮崎希沙

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■私症説[37]
ヨコハマは呪う

永吉克之
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20120517140300.html >
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4月に、仕事の打ち合わせがあってヨコハマに行った。何の仕事なのかは、先
方さんにとって社外秘になることかもしれないので、念のために伏せておく。

また、打ち合わせの後、3人の方々と居酒屋で献酬したのであるが、その面子
も一応伏せておく。今週火曜のデジクリを読めばそれがわかるが伏せておく。
ちなみにFB(この頭文字が何を表しているかは伏せておく)の私のページを見
ればたちどころに面子がわかるが、その事実も伏せておく。

                ■

ヨコハマに足を踏み入れたのは何年ぶりだろう。五木ひろしの『よこはま・た
そがれ』がヒットしたのが1971年だから41年ぶりだ。いや待てよ、いしだあゆ
みの『ブルーライト・ヨコハマ』が1968年だから、44年ぶり。時の経つのは早
いものだ。

44年前のヨコハマはまだずっと、私の住んでいる大阪に近く、横浜駅までは特
急で1時間ほどだった。神戸と海の玄関口を競うようになるのはかなり後のこ
と。その頃のヨコハマは伊勢湾に面した漁師町といった風情で、そのため住民
といえば、カニだのイカだのといった魚介類ばかりだった。

飲屋街の店が入り口の引き戸を全開にして、客が店から店へと気楽に渡り歩く
夏場、ギターを担いでヨコハマに出稼ぎに行ったことがある。客のリクエスト
に応えて歌う、あるいは客のヘタくそな歌の伴奏をする、いわゆる「流し」を
するのが目的だったが、しょせん相手は下等な魚介類なのだから曲の良し悪し
がわかるはずもなく、いい加減に弾いてカネを巻き上げようと考えていたのだ。

「お客はん、一曲どないでっか?」

日本の魚介類のくせに日本語がわからないらしく、こっちが何を聞いてもピチ
ピチ跳ねたりブクブク泡を吹いているだけで、何の曲をリクエストしているの
か皆目わからない。そもそもリクエストをしているのかどうかすらわからない。

しかしそれでは商売にならないので、菊池章子『岸壁の母』や津村謙『上海帰
りのリル』など、海のある街に相応しい曲をいくつか歌ってみたが、相変わら
ずピチピチブクブクしているだけで、歌が気に入ったのかどうかもわからない。

新旧和洋取り交ぜて10曲ほど歌っても一向に反応がない。私もさすがに頭にき
て帰ろうと思ったが、手ぶらで引き下がるのも業腹なので、店にいた客のうち、
カニを2〜3匹掴んで宿に戻り鍋にして食べたらこれがまた旨かった。身がいっ
ぱい詰まっていて歯ごたえも充分。

翌日、車で大阪に帰る途上、道を歩いていたタラバガニやらズワイガニやらを
片っ端から捕まえて、その足で道頓堀の「かに道楽」に持ち込んだら、店のオ
ーナーが驚いて尋ねた。

「こらまた、えらい上物でんなぁ。どこで仕入れなはった?」

もちろん、ヨコハマの住民をとっ捕まえて来たとは言えないので、仕入れ先は
答えなかったが、なにしろ卸値をべらぼうに安くしたので、訝りながらもオー
ナーは取り引きに応じた。その後私は、カニからエビ、イカ、イワシなどにも
手を拡げ、ヨコハマの住民が絶滅するまでこの商売は続いた。

                ■

そんなヨコハマに人が住むようになったのは、東に向かって移動し始めてから
だ。ヨコハマが現在の房総半島南端に落ち着くまでに、その通り道となった地
方の文化や習慣、言語、風土病などを吸収して、史上まれに見る独特な文明を
築き上げたのであった。

先月ヨコハマの居酒屋で一席設けてもらった時のことに話を戻す。ご同席の3
名のうち、Be氏は先祖代々、白亜紀からのハマっ子。T氏は埼玉県、Br氏は神
奈川県だが、どちらも近県だからヨコハマ文明に対して耐性を獲得しているよ
うだった。しかし私は300マイル以上離れた河内の國の人間なので、最後には
錯乱状態に陥ってしまった。

佇まいは普通の和風居酒屋なのだが、何か硬い物がコンコン当たる音がするの
で何だろうと思ったら、奥の畳の間がバッティングセンターになっていて酔客
が狂ったように打棒をぶん回している。ネットが張られていないので、ときど
きボールやスっぽ抜けた打棒が客席に飛んで来て食器を粉砕したり、客を直撃
したりするのだが、鷹揚なヨコハマの人たちは蚊がとまったほども気にしない。

メニューを見ると「飲み放題プラス・バッティング20球で1名様2500円」とい
うセットがあった。ヨコハマではこういうサーヴィスは当たり前らしく、槍投
げやハンマー投げをセットにしている店もあるとのこと。たまに客が死ぬこと
もあるらしいのだが、板子一枚その下は地獄、という漁師の世界で生き残って
来たヨコハマの人たちには世間話のネタにもならないのだそうだ。

日帰りするつもりでいたので、ビールだけで軽く済ませようと思って、注文を
取りに来た店員に「ビー……」と言ったら、隣にいたBe氏が慌てて私の口を手
で塞ぐと耳元でささやいた。

「ヨコハマで居酒屋に入ったらなぁ、最初はヘイケガニの鍋を喰うのがしきた
りぞん。ビールなんて注文してみら、もう、べらこいことになっちまうがん」

向かいに坐っていたおふたりも、青い顔をして「そうそう」と眼で私をたしな
めた。店内を見回すと、あちこちに鍋が置いてあったが、やはりヘイケガニを
食べていたのだろう。

ヨコハマ弁はよくわからないのだが、とにかく最初にビールを注文すると大変
なことになるらしいので、しきたり通りヘイケガニを注文したら、これがまた
不味くて喉を通らない。ヘイケガニは食べられないから網にかかってもすぐに
捨てると聞いたことがある。

「こいつはいくらなんでも……」と独りごとを言ったら、またBe氏が私の口を
塞いだ。そして店員の眼を気にしながら小声で言った。

「非常識だな。残したら、おめ、どうなっても知らねぞん!」

私は半泣きで、何度も戻しそうになりながら何とかヘイケガニを胃に収めた。

「食べたから、もうビール注文してもいいですよね?」
「うんじゃ。次はガソリンを飲むでらい」
ガソリンとは強い酒の銘柄かと思ったら、本当のガソリンがグラスに入って出
てきた。

「44年前のカニのたたりだ……」

そんな言葉がひとりでに口から漏れた。その後のことはよく覚えていないが、
私が制止を振り切って店を飛び出すと、店員たちが「ぐえっぐえっ」とか「ち
ょわー」とか「びぎゃー」とか叫びながら追いかけて来た。それを見た歩行者
もいっしょになって追いかけて来る。四つ脚で走って来る者もいれば、空中を
飛んで来る者もいる。

私は逃げながら、桜田淳子の『追いかけてヨコハマ』を口ずさんでいた。

【ながよしのかつゆき】thereisaship@yahoo.co.jp
ここでのテキストは、ブログにも、ほぼ同時掲載しています。
無名芸人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz >

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■ショート・ストーリーのKUNI[117]
ひとみととしお

ヤマシタクニコ
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20120517140200.html >
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ゴールデンウィークも過ぎて5月にしては気温が高いある日、ここは古くて狭
い賃貸住宅の一室。

「ああ、なんだかいらいらするなあ」
「私も。気のせいかと思ったけど、ほんとにいらいらするわ」
「暑いからかなあ」
「かもね。5月だなんて思えないくらい。わっ」
「どうした」

「これのせいよ。何これ、いまだにファンヒーターがリビングに」
「そりゃそうさ。さっさと片付けないから」
「今日みたいな日は見ただけで暑苦しいわ、ファンヒーター」
「まったく同感だ。早くしまって、かわりに扇風機を出すべきだ」
「同感ね。扇風機があればきっと涼しいわ。なのになんでファンヒーターが」

「そう思うならなんとかしろよ」
「いやよ。めんどくさい。あなたがすれば」
「いやだよ」
「ああ暑苦しい」
「言うなよ。ますます暑苦しい」

油断もすきもないもので、このやりとりがたちまちしかるべきところにキャッ
チされたらしい。一人の男がやってきた。

「おじゃまします。なんですか。ファンヒーターをしまって、そのかわりに扇
 風機を出したい、と」
「ええ」
「家が狭いもんで、どっちかを出してどっちかをひっこめないとだめなんだ。
 それがめんどくさくて」

「わかります。どこのご家庭でも同じでして、今ごろの季節には夫婦げんかが
 多発します。夏の前、冬の前は離婚件数がピークに達するというデータもあ
 ります」
「ああやっぱり」

「そのような悲劇を少しでも減らしたい一心で、当社が新商品を開発しました。
 自分で押入れから出てくる扇風機、自分で押入れにひっこむファンヒーター」
「なんだって!」
「そんなすばらしいものがあるの。知らなかった。買いましょうよ、ねえ」

「うん。考えてみれば、今の時代、そういうものがあっても不思議じゃない。
 ファンヒーターや扇風機も自立しないといけないんだ。これは決してわれわ
 れがものぐさなことを棚に上げて言ってるわけではない」
「もちろんよ、あなた」

「すぐにでも買いたいが、私としては古いファンヒーターや扇風機を捨てるの
 は気が進まないなあ。ファンヒーターは10年、扇風機は15年も使っている。
 ほとんど家族同然なんだ。特に扇風機には『ひとみ』と名前もつけている」
「えっ、知らなかったわ。そんな名前をつけてるなんて。そういう私もファン
 ヒーターに『としお』とつけてますけど」

「ご心配いりません。今あるファンヒーターや扇風機、いえ、ひとみさんやと
 しおさんに同じ機能をつけ加えることができるのです。ちょっと割高ではあ
 りますが、ええっと、これこれで」
男は電卓をちょちょちょっと操作して、夫婦に数字を示した。

「ふうん」
「けっこうするんだな。来年は初孫の節句でひな人形を買ってやるつもりでい
 たが」
「やめましょうよ、そんなの。孫より私たちのほうが大事よ。だいたい勝手に
 デキ婚なんかするほうが悪いのよ」
「それもそうだな。じゃあそうしてもらおう」

契約をするとさっそく技術者がやってきた。そして、ファンヒーターと扇風機
に装置を取り付けた。装置はとても小さなもので、見た目はまったくもとのま
まだ。

技術者が装置を「ON」にして帰ると、さっそくファンヒーターがもぞもぞし始
めた。30秒くらい、ファンヒーターは──正確にはファンヒーターに取り付け
られた装置は──自分の今いる状況を検証しているようだった。そして、やお
ら向きを変えると、押入れに向かってずずずずずずずずずずずと移動し始めた。

「やった!」
「動いたわ!」

ファンヒーターは自分で押入れの前まで行った。押入れのふすまは技術者が開
けていったままだったが、そこからほぼ同時に扇風機が出てきた。そしてずず
ずずずずずずずずずずと首を振りながらリビングに移動し、押入れの空いたス
ペースにはファンヒーターがぴたりと収まった。

「なんてすばらしい!」
コードをコンセントに差し込み、スイッチを押すと扇風機はぶいーんと調子の
良い音をひびかせ、暑苦しい室内に風を送った。

「ああ、涼しい」
「これからは毎年、苦労しなくてすむのね」
「ほんとうだ。君といちいちけんかせずにすむ」
「私たち、離婚の危機を乗り越えたのね」
「わはは」

やがて本格的な夏になり、その夏が過ぎて秋になった。夫婦がすっかり装置の
ことを忘れていたある日の深夜。

グワラグワラ、ドドド、ガシャッ、グシャッ、バリリリリッ!

恐ろしい音がしたと思うと、押入れのふすまを突き破ってファンヒーターが出
てきた。そしてずずずずずずずずずずずとリビングに移動していった。そこに
はまだ扇風機がいた。ファンヒーターはかまわず、突進した。かたくなに動か
ない扇風機。

ドーン! 
夜中のリビングにものすごい音が鳴り響いた。

翌日、技術者とセールス担当がふたりでやってきた。
「何かトラブルが起きたとお聞きしておりますが」
「トラブルが起きたどころじゃない。自分で出てくるのはいいが、押入れのふ
 すまが破れてしまったじゃないか」

「それに、押入れににしまっていた、もらいもののテディベアとかもらいもの
 のマグカップやもらいもののバーベキューセットが散乱してぐちゃぐちゃな
 の。ほら」
「もらいものでも使わないものは早く処分しろと言ったじゃないか」

「いつか使うかもしれないじゃないの。それに、扇風機とファンヒーターが両
 方出てると部屋が狭いの」
「そうそう。問題は、リビングも押入れも狭いということなんだからな。そこ
 をなんとかしてもらわなきゃ」

技術者とセールス担当はうなずいた。
「わかりました。これまではきめ細かくばらばらに設定していたのですが、そ
 れがかえってよくなかったようです。では、今後はシンプルに、一定の気温
 以下になるとファンヒーターが出てきて同時に必ず扇風機が引っ込む、また
 一定の気温以上になるとファンヒーターが引っ込んで必ず扇風機が出てくる
 と、このようにさせていただきます」

「ええ、そうしてくださいな。いいわね、あなた」
セールス担当はさらに続けて
「あと、ふすまが破れてしまったということなので」
「ええ」

「ファンヒーターや扇風機が、自分でふすまを開けて出てくるようにしましょ
 うか」
「できるのか、そんなこと!」
「なぜ最初からそうしてくださらなかったの」
「申し訳ありません。で、ついでに各自自分で電気やガスコンセントに接続す
 ると。もちろん追加料金が必要ですが。えっと。これくらいで」
また電卓をちょちょちょっと操作して、数字を見せた。

「いかがなもんでしょう。少々お高いと思われるかもしれませんが、それだけ
 の値打ちは十分あるかと」
「うーん。次女のほうもデキ婚で来年孫ができるそうなんだが、こいのぼりを
 どうしようかと…」
「孫なんかどうでもいいわよ。そんなのほっといて、追加でそうしてもらいま
 しょ」
「そうだなあ」

そういうわけで、この家の扇風機とファンヒーターにさらに新しく機能が追加
された。どちらも気のせいかりっぱになったように見えたが、もちろん気のせ
いだ。

順調にその年の秋も深まり、冬になり、年が明けて春になった。ぽかぽか陽気
が続き、テレビのお昼のニュースが「今日は、ほぼ全国的に汗ばむ陽気となり
ました」と、暑苦しそうにしている人々を映し出した。すると、押入れのふす
まがさっと開き、中から扇風機が出てきた。入れ替わりにファンヒーターがず
ずずずずずずとリビングを移動して押入れのふすまを自分で開けて中に入った。
ぴしゃ。自分でちゃんと閉めた。

「まあ、なんて賢いのかしら。さすがだわ、としお」
「ひとみもだ。これで片付けの手間から解放された。いやあ技術の進歩はすば
 らしい。長生きはするもんだ」

ところが、翌日は一転して肌寒くなった。「たいへんです。日本列島に時なら
ぬ寒波がやってきました」とテレビのお天気番組が言う。都心部に雪が積もり、
転んでいる人の映像が何回も映し出される。

扇風機はそれを聞いていたかのようにまわれ右をして押入れに向かった。すで
に押入れのふすまをずいっと開けて出てきたファンヒーターと交代する。自分
でふすまをぴしゃっと閉める。ファンヒーターはリビングで勝手にガスコンセ
ントに接続してスイッチを入れ、ぶわーっと温風を吐き出す。

「あったかいわ〜」
「極楽極楽」
「えらいわ、としお」

次の日はまた暑くなった。「公園では早くも水遊びをするこどもたちの姿が」
ニュース番組が言う。ファンヒーターはまた引っ込み、かわりに扇風機が出て
くる。勝手にぶんぶん回って風を送る。ファンヒーターは押入れのふすまを開
けて中に入る。ぴしゃ。ところが翌日また……

「いい加減にしてほしいわねえ。めまぐるしくて落ち着かないわ。で、今は何
 でしたっけ、扇風機が出てるんでしたっけ」
「ひとみだ」
そのひとみはぱらぱらぱら、とたよりない回りかたをしていたと思うと、ぴた
っと止まってしまった。

「あらま。何回も出たり入ったりで疲れてしまったのかしら」
「そうじゃない。羽根に変なものがはさまって……なんだこりゃ。10年前の年
 賀状。あと、のびたゴムひもに、スパイダーマンの前売り券のおまけのバッ
 ジ……だから、押入れはちゃんとかたづけろと言ってるだろ」
「あなたこそ」
「君こそ」

なんだかいろんなものをいっぱい身にまとった扇風機がきょとんとしていた。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/ >
< http://yamashitakuniko.posterous.com/ >

もともと鼻がアレルギー気味の私だが、何か月か前から夜寝るときは完全に鼻
がつまり、口呼吸してしまうようになった。口の中ががさがさに乾燥していや
な感じ。友人に言うと「マスクをして寝るといい」とアドバイスされ、迷って
いたが先週から実行している。うーん、ちょっと効果あるかな。ちなみに「迷
っていた」理由は「時々マスクのゴム跡が顔につく」と聞かされたからだが、
まあいまのところだいじょうぶなようだ。

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■more READ, more MESS!![03]
MESS002 フェルト動物ブローチ作品集「URBAN SAFARI」制作記

宮崎希沙
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20120517140100.html >
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自費出版レーベルMESS。前回に引き続き、ラインナップの書籍を作るまでの具
体的なお話をしたいと思います。

第二弾は、「URBAN SAFARI 2012 Collection」。羊毛フェルトでスーパーリア
ルな動物のブローチを作っている、茨木菜摘 < http://d.hatena.ne.jp/ivrk/ >
のブランド「URBAN SAFARI」のカタログ的役割の本です。

URBAN SAFARIとは……「身につける野生」をテーマに、都会に暮らしながらも
野生動物の力強さやエネルギーをキャッチできるようなアクセサリーを制作し
ています。< http://www.facebook.com/urbansafariiiii >

羊毛フェルトという柔らかい毛の素材に、ニードルを刺してゆくことによって、
徐々に固く成形してゆく手法で、作品を作る人はいま結構いるのではないでし
ょうか。彼女の場合は、その手法でとてもリアルな描写をすることにより、動
物モチーフでありながら、可愛いだけでなく力強さを持ち合わせた作品を産み
出しているのです。

もともと動物をこよなく愛す彼女は、この手法に辿り着くまでにも沢山の観察
を重ね、絵や立体で描写を続けていました。その愛ゆえに産み出される力強さ
が、何にも代え難い存在の作品になっています。

可愛らしい手芸作品とは一線を画す"かっこいい"動物ブローチたち。ただ、
一点一点の手作業ですから、生産にかける時間はある程度必要です。完成した
端から展示会や委託販売店舗でどんどん売れていってしまうので、彼女の手元
に様々のバリエーションの動物たちが残らないことが、とてももったいなく思
っていました。

そこで、きちんとした撮影環境で作品を記録したいという彼女の希望から始ま
り、2011年秋までの段階で作ったバリエーションの動物を、一度カタログ形式
の本にしてみようという話に進んでゆきました。

スタジオを借り、カメラマンを志す友人の熊原哲也さん
< http://tkumahara.blogspot.jp/ > に作品の物撮りをお願いしました。

白バックで各作品の接写と、友人何人かにモデルをお願いして、着用写真も撮
影。ブローチたちは、女性だけでなく男性にもぜひ着けてもらいたいというコ
ンセプトから、男女を同数撮影して使用しました。

実際に、男性が着けてもとっても似合うことがよくわかります。表紙に採用し
た、たくさんのブローチを床に敷き詰める写真のディレクションも、その場で
出て来たものです。

ブローチをカタログにするにあたって、実物のブローチだけでもう充分な完成
度があるので、それを美しく見せるだけのできるかぎりシンプルなビジュアル
を提案しました。ブランドのロゴタイプはもう既に出来上がっていたので、そ
れに合わせたマークによるノンブルなど。

そして外見ですが、普通の形で冊子にしても芸がないので、ブローチのサイズ
がわかるように、すべてをほぼ実物大で一ページにつきひとつ載せ、本自体の
サイズを120mm×120mmの変形にしました。ブローチを実際に手に取った可愛ら
しいサイズ感と同じような、手に馴染むサイズになりました。

本文はもちろんフルカラー印刷で50ページ。こうなると、予算がかさんできま
す。オンデマンド印刷を使っても、かなりのコスト。単価が上がり過ぎても困
るので、50部での出版になりました。

また、デザインを考えているときから、本を裸の状態ではなく箱入りにしたい
という思いがずっとありました。実際にブローチを箱に入れて販売していた経
緯から、ブローチを手にする感覚と同じように、どうしても型抜きの窓を付け
た箱にスリップインさせたかったのです。でも、印刷代だけでもう予算がほぼ
尽きてしまった!

そこで、ファーストビンテージという種類の紙の最厚口を使い、50個の箱を手
作りすることになりました。まず片面に、ロゴの矩形で窓を空けて、そこから
表紙の写真を覗かせるために、カッティングマシーンで窓型を切り取ります。

ちょうどその頃に、クラフトロボというパーソナルなカッティング・マシンを
知人から譲り受けたので、それを駆使しました。このマシンは小型のプリンタ
のような形をしていて、USBでPCに繋げばillustratorのパスデータに沿って、
カッターの刃で紙を自動的に切り出してくれる、とっても優秀なメカです。

そしてもう片面に、位置を合わせてロゴを金色インクでシルクスクリーンプリ
ント。箔押しとはまた違う風合いの、しっとりとした金色の印刷が上質感を醸
し出しています。シルクスクリーンは、Tシャツくんという機械を持っていた
ので、それで感光させ版を作り刷り上げました。

仕上げに、本の本体に合わせた厚みでスジ付け。箱の形に折り、接着。両サイ
ドが空いたスリップケースの出来上がり。こうして、自宅で完結させた作業に
よって、ほぼ紙代だけで「ロゴ型抜きとシルクスクリーン刷りの箱」を完成さ
せたのです。それによって、本一冊の価格はフルカラー50ページにもかかわら
ず1,365円(税込)に抑えることが出来ました。

この本に載っているものが、URBAN SAFARIのブローチのすべてではありません。
彼女は常に新しい種類の動物たちを産み出しています。URBAN SAFARIブランド
は、GWの最後の週末5月5日・6日に、青山spiralで行われたSICFにも出展。次
々と新しいシリーズを作り続けています。今後とも期待して下さい。

「URBAN SAFARI 2012 Collection」茨木菜摘は、こちらから。残り部数はかな
り僅かになっています。ブローチのディティールが、貴方の手元でじっくりと
眺められます。
< http://mess-pressed.com/002.html >

【宮崎希沙】グラフィックデザイナー/自費出版レーベルMESS主催
< http://mess-pressed.com/ >
< http://d.hatena.ne.jp/december_girl/ >

とある会社のDTP部署に潜り込み、日々必死に勉強。朝が早くて苦戦。デザイ
ンを学校で学んでいただけでは、知らない事の方が遥かに多く、実戦技術を身
につける努力の必要さを身に染みて実感中。勤めに出ながら自分だけが出来る
仕事もちゃんとやって行きたいです。

最近読んで面白かった本は、「プロ無職入門/高木壮太」「TOKYO 0円ハウス0
円生活/坂口恭平」「分福茶釜/細野晴臣」「異性/角田光代、穂村弘」「再
起動せよと雑誌は言う/仲俣暁生」など。

最近のお仕事は、< http://d.hatena.ne.jp/december_girl/ >より
・大倉山の美容院"iCE"のためのイラスト制作
・新進気鋭の映画監督たちによる映画祭"前夜映画祭"
< http://zenyaeigasai.tumblr.com/ >の当日パンフレット制作
・名古屋のアンティークレースブランド"Angelica Leaf"のカタログ制作
・日本各地へ移住計画の作家・竹内波のHP制作のお手伝い
< http://takeuchinami.com/ >
(最先端と、不便な最古感の同居というアンバランスさが最高なHPです。
何故かトップの絵がつまんで動かせる謎機能搭載。スマホでも見れるけどPC推
奨です。音量注意)
4人組zine制作ユニットyakk < http://yakkblog.blogspot.com/ > でも、初夏に
向けて大型企画を構想中です。

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編集後記(05/17)

●GW中に市立郷土博物館で開催された「第35回埼玉県名刀展 古刀の美」を見
に行った。この博物館とは少々縁があり、10年以上も前に「昭和の暮らし展」
を企画した友人の依頼で、所有していた名作コミックスを段ボール2箱ぶん貸
してやり、堂々展示されたのだった。さて、今回の展示は鎌倉時代から室町時
代にかけての刀剣類が中心で、短刀、太刀、脇差、刀など20振と刀装具13点。
ものがものだけに、頑丈なガラスで囲った展示と受付ふたりの態勢だ。それに
しても日本刀は美しい。魅入られる。欲しくなる。自転車、カメラ、自動車、
家電などで美しいデザインだな、すばらしい機能だなと思うものがいくつかあ
るが、美しさと機能で日本刀を超えるものはない。本当に欲しい。

展示を見て気がついたのは、ほとんどが刃を下に向けてセットしている中で、
刃を上向きにしたものが2点あったこと。その理由はなにか。受付に座ってい
たおじさん(たぶんわたしより年上)に聞くと「よく気がつかれましたね」と
満面の笑み。刃を下向きにして紐で腰に吊るす(佩く)のが「太刀」で、刃を
上向きして帯に差すのが「刀」である。だからその形態で展示してある。とい
うようなことを滔々と説明してくれた。つまり、よくある質問と回答なのだ。
よほどぼんやりしていなければ、誰でも気がつく疑問だ。それを「よく聞かれ
るんですよね」ではなく、「いいことを聞いてくださいました」という感じで
応対するのが、おじさんの配慮である。まことに気持ちがいい。つい、拝一刀
の胴太貫は、柳生十兵衛の三池典太は、近藤勇の虎徹は、佐々木小次郎の物干
し竿は、なんてよけいなことを言いたくなるのを必死にこらえる。 (柴田)

●自分で出てきてひっこむ、ひな人形はいいかも。箱に入ってくれるだけでも
いい。うちのは、とても古い7段ぐらいのもので、飾るのは楽しいものの、し
まうのは大変であった。

時間の使い方が下手だ。不規則な生活を正すべく、iPhoneのアラーム機能を使
い、学校の授業のチャイムのように音楽を鳴らす。起床はもちろん、始業時間、
休憩、家事……。ほとんど無視することになるのだが、一応の目安にはなる。
GWだからと止め、再始動を忘れ、GW明けにだらだら仕事をしていたのは、その
せいだ、ろう、……たぶん。あるサイトに、リマインダー機能を使い、悪習慣
を断ち切る仕組みが書かれていた。アラームでいいんじゃないの? とは思い
つつ読み進める。画面キャプチャには「笑顔(゚∀゚)」や「お、ちゃんとできて
んじゃん」などと書かれてあって、素敵だと思った。「お、ちゃんとできてん
じゃん」ってフレーズがとても自然で、くすぐったくて、嬉しくなってしまう。
「iPhone」から言われているみたい。自分で自分を褒めることって大切だよね。
自信になるし、できてなかったらやらなきゃと思えるし。早速真似することに
した。記事には30分後に同じリマインドが表示されるのだが、純正リマインダ
ーの繰り返し機能は最短でも一日。これって同じフレーズをいくつか仕込んで
いるってこと? 短くリピートする別のリマインダーを使っているってこと? 
アラームだったらスヌーズ機能があるし、音楽も変えられるから、やっぱりア
ラームの方が良いかも。リラックマのスタンプにある「やればできるんです」
「そのちょうしですよ」「ハナマルあげます」、そして大好きな「ここらで 
ひとハナさかせてみますか」を仕込んでみようかな。    (hammer.mule)
< http://d.hatena.ne.jp/renewal49/20120515/1337086632 >
iPhoneのリマインダーで猫背を治すぜ、という話
< http://www.kaomojinavi.net/ >
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発行   デジタルクリエイターズ < http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/ >

編集長     柴田忠男 < mailto:shibata@dgcr.com >
デスク     濱村和恵 < mailto:zacke@days-i.com >
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