2011年8月29日月曜日

日刊デジクリ[#3101] Windows Phone 7.5に見る「ヒトとコミュニケーションの形」

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       《HTML5というキーワードに大した意味はない》

■明日もデザインで食べていこう![20]
 HTML5でつくるカメラ&落書きアプリ(中国GTUGハッカソンで発表)
 秋葉秀樹

■クリエイター手抜きプロジェクト[286]Adobe Flash CS3/CS4/CS5編
 Bridgeで選択したファイルをFlashに配置する
 古籏一浩

■データ・デザインの地平[09]
 Windows Phone 7.5に見る「ヒトとコミュニケーションの形」
 薬師寺 聖

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■明日もデザインで食べていこう![20]
HTML5でつくるカメラ&落書きアプリ(中国GTUGハッカソンで発表)

秋葉秀樹
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110829140300.html >
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先日、東京ではGoogleとHTML5 Developer's JPのイベントがあり、大阪でもこ
の中継を見ようと何十人かで集まって見たあと、僕らで大阪のセッションをし
ました。

「HTML5が盛り上がってます」と世間では言われてますが、それらに惑わされ
ることなく大阪ではかなりぶっちゃけトークが行われ、スピーカーとして参加
させてもらった僕も、現場サイドの意見をぶちまける結果となりました。現場
で働くWeb制作者の方は興味深く耳を傾けていました。

USTREAMで配信していますのでよかったらご覧ください。
< http://www.ustream.tv/recorded/16788143 >

さてさて、お盆に岡山で開催された中国GTUGのハッカソンイベントに参加して、
優勝してしまいました! デザインは奥さん、フロントが僕の2人で頑張って
みました。ちなみにGTUGというのは、『Google Technology User Groups』の
頭文字で「ジータグ」と読むそうです。知り合いの方がいらっしゃるというこ
とが参加のキッカケでした。

この日のテーマは「HTML5」であることが条件。作ったのはHTML5で作るカメラ
アプリ。動画に撮ってみました。すみません! 横です!!
< http://www.youtube.com/watch?v=1KBe8U1vNNQ >

WHAT WGが策定しているgetUserMediaというメソッドを使って、ブラウザから、
カメラやマイクにアクセスするというもの。現在は、Android用Opera Mobile
の中でもちょっと特殊な(?)Operaだけが、このgetUserMediaをサポートし
ています。これが実用化されたら、僕らデザイナーでもカメラ系のアプリが
HTML5ベースで作れるようになるんじゃ? と思ったりしました。

ちなみにこういった技術を知ったキッカケはこのサイトです。
< http://my.opera.com/core/blog/2011/03/23/webcam-orientation-preview >

Androidスマートフォンを持っている人はブラウザでアクセスして、この試験
中とも思えるOpera Mobileをダウンロードしてください。
< http://akibahideki.com/blog/2011/08/20/download_operamobile_lab.jpg >

サイトにアクセスして、画面を少し下にスクロールすると「Android Build」
というリンクがすぐ見つかるはずです。これをタップするだけでダウンロード
が始まります。ダウンロードが終わったら、上図右のようにアイコンをホーム
の画面にでも配置しておきましょう。Operaのアイコンに「LAB」と書いてある
のがそれです。

その「LAB」と書いているOperaを起動して、ハッカソンで作ったやつのアドレ
スにアクセスしてください。
< http://ecoloniq.jp/opera_de_camera/ >
※ハッカソンの制限時間の関係上ちょっとした不具合があります。そのときは
更新をタップしてください(ちゃんと作りたいなあ...)

●カメラの映像をブラウザに映す

カメラの画像をブラウザに映すのは、とても簡単です。

【HTML】
<video autoplay>

【JavaScript】
// jQueryを読み込んでいます
$(function (){
var video = $("video").get(0);
if(navigator.getUserMedia) {
navigator.getUserMedia('video', successCallback);
function successCallback( stream ) {
video.src = stream;
}
}
})

なんとこれだけ! これでカメラからの映像がライブストリーミングされてい
ます。びっくり。

●撮った静止画をcanvas要素に描画する
< http://akibahideki.com/blog/2011/08/19/opera_camera_elem.png >

で、これを「カシャッ」と撮りたいので、ここでcanvas要素の登場です。
canvasタグをまずは2枚用意して重ねました。(「枚」って変ですね)
1枚はカメラで撮影した静止画像を描画するためのもの。もう1枚はユーザにお
絵かき(落書き)してもらうための空白のもの。この2つのレイヤーを用意し、
position: absoluteで重ねます。

●タッチイベントで画像をcanvasに描画する

最初に落書きするブラシを選択しますが、その要素はimg要素ですからcanvas
要素に直接描画できます。canvasへの描画って、img要素か、video要素か、
canvas要素の3要素だけは、ビットマップをcanvas要素に「コピー」できるの
です。

このコードは、canvas内の描画領域(コンテキストという)に、img要素を貼
付けます。座標も指定できますので、指でタップした場所にimg要素をcanvas
要素に表示することができるわけです。

canvas要素の描画領域.drawImage(img要素, x座標, y座標);
本当は、ブラシサイズや色まで決めたり出来たらもっと良かったのですが、な
んせ僕の知識レベルなので、touchmoveしている最中にdrawImageしてブラシ画
像をcanvasに配置するところで、精一杯でした。

●シャッターで絞るアニメーションは、canvasで円をクリッピングマスク

↓↓↓ 撮影ボタンをクリックorタップしてみてください
< http://www.akibahideki.com/blog/2011/08/20/shutter_test.html >

canvas要素内には画像をクリッピングマスクする、clipメソッドがありますの
で、シャッターの画像をアニメーションする円でマスクしました。もうちょっ
と早くしても良かったかな?

●シャッター音はAudio要素

「カシャ」という音がなくって、その場では違う音を入れたんですが、音の再
生はとても簡単です。今回は、JavaScript内でAudioを生成して、鳴らしたい
タイミングでplayメソッドを使ったので、実際の音関連のコードは3行くらい
しか書いていません。

var audio = new Audio();
audio.src = "sound/shutter_sound.mp3";

//シャッターボタンが押されたタイミングでplayメソッドを呼ぶ
audio.play();

他にも色々やりたいことがありました。消しゴムツールを用意、落書きした画
像を保存させる、ブラシの向きや大きさをランダムに、などなど……


●HTML5というキーワードに大した意味はない

ついでに、最近『HTML5』というキーワードについて思うことをちょこっと書
きます。

もっと経験を積んでいるプログラマーだったら、もっと高機能なものを短時間
で作れると思います。僕はユーザインターフェースのデザインの勉強をしてい
るし、見た目を華やかにするビジュアルデザインを得意とするデザイナーです
が、開発に関してはやりたいことはアタマの中にあっても実力が伴いません。

今までHTMLとCSSでユーザが触れる側を作ることができた僕らWebデザイナーも、
こういったカメラとかタップとかサウンドとかで、人を楽しませるアプリケー
ションに拡張することができるんだということに気づきます。これがHTML5の
目的のひとつなんだな、と。

最近HTML5ってキーワードが盛り上がってますね。セミナーとか、それだけで
人も集まりやすい。でも、僕が思うのは、そんなトレンドに惑わされているだ
けで、本質をしっかり理解できていない僕達も問題だと思います(理解できて
ない人が悪いのではなく、発信する側の責任もあると思う)。

例えば、お客さんに「ウチはHTML5やCSS3を使ったコーディングができます」
とか言ったところで、正直それがどうした!? って感じです。そこは誰が幸
せになるの? という具体的なビジョンが見えてない人ほど、そのキーワード
を使いたがっているような今が伺えます。

誰かのためになるHTML5なのか? ただの営業トークで、中身のないHTML5とい
うだけのキーワードなのか?

僕は最近そんな業界への流行りに疑問があって、なにがトレンドなのか? そ
の中身を理解したく、開発者のイベントには積極的にアウェーでも行きたいと
思います。自分がプログラムをまともに書ける、書けないが問題ではなく、ち
ゃんとデベロッパと意思疎通ができるデザイナーでないと、よいサービスは作
れないと確信してるからです。

正直この程度のアプリでは、まだまだなのは分かっているのだが……(エラそ
うなこと言ってますが勉強中の身です)。少なくとも、ハッカソンに僕のよう
なデザイナーが参加させてもらってることは決して無駄なことじゃなく、ただ
技術の学習でもなく、コミュニケーションの勉強であり、誰かを幸せにする何
らかの手段を異業種から学ぶ勉強、ということだと思っています。

ここから先の話はかなりディープな話になるので、別のエントリーに書きたい
と思います。

【あきば・ひでき】
hidetaro7@gmail.com
< http://www.akibahideki.com/blog/ >

テクニカルディレクター・デザイナー。DTP黎明期からグラフィックデザイン
を学び、東京都営団地下鉄など交通広告を多数手がける。同時に音楽活動も活
発に行い、西日本半全国ツアーなどを展開、某専門学校のテーマソングを作詞
作曲、編曲から楽器全てを演奏してレコーディングするなど、マルチなクリエ
イティブ活動も。最近では東京と大阪の教育施設などで講師業をも務める。
HTML CSS JavaScript Flash ActionScript 3DCG Movie DTP GraphicDesign...
多種スキルを持つ。Web標準技術だけに執着せず、全てのメディアで説得力の
ある表現にチカラを注ぎたい、そんな仕事をしたい。

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■クリエイター手抜きプロジェクト[286]Adobe Flash CS3/CS4/CS5編
Bridgeで選択したファイルをFlashに配置する

古籏一浩
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110829140200.html >
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Adobe Bridgeのウィンドウで選択した画像ファイルを、自動的にFlashに配置
するスクリプトです。Flashでは画像ファイルをBridgeから直接ドラッグドロ
ップできません。このスクリプトを使えば、複数の画像をファイルをまとめて
ステージに配置することができるので少しは役立つかもしれません。

なお、スクリプトはBridgeやFlashからではなく、ESTK上から実行してくださ
い。実行する際のターゲットアプリケーション名はBridgeになります。

以下のスクリプトは、Bridgeのウィンドウで選択された画像をファイルを
Flash CS3のライブラリに読み込ませるものです。実行する前にあらかじめド
キュメントを用意しておく必要があります。


var diskName = "SnowLeopard"; // ルートドライブ名
var fileList = app.document.selections;
for(var i=0; i<fileList.length; i++){
myBTalk("file:///"+diskName+fileList[i].path);
}

function myBTalk(filename){
var scriptcode = 'dom = fl.getDocumentDOM();';
scriptcode += 'dom.importFile("'+filename+'", true);';
//$.writeln(scriptcode);
var btObj = new BridgeTalk;
btObj.body = scriptcode;
btObj.target = "flash-9";
btObj.send();
}


ステージにも同時に配置したい場合は、以下の行の最後にあるtrueをfalseに
してください。

scriptcode += 'dom.importFile("'+filename+'", true);';


特定の拡張子を持つファイルだけを貼り付けたい場合には、以下のようにしま
す。上から2行目の拡張子リストを変更、追加することで任意の拡張子を持つ
画像ファイルを配置することができます。


var diskName = "SnowLeopard"; // ルートドライブ名
var ext = [".jpg", ".png", ".gif"]; // 拡張子
var fileList = app.document.selections;
for(var i=0; i<fileList.length; i++){
for(var j=0; j<ext.length; j++){
if (fileList[i].path.indexOf(ext[j]) > -1){
myBTalk("file:///"+diskName+fileList[i].path);
}
}
}

function myBTalk(filename){
var scriptcode = 'dom = fl.getDocumentDOM();';
scriptcode += 'dom.importFile("'+filename+'", true);';
//$.writeln(scriptcode);
var btObj = new BridgeTalk;
btObj.body = scriptcode;
btObj.target = "flash-9";
btObj.send();
}


Flash CS3でなくCS4で実行する場合は以下のようにしてください。

btObj.target = "flash-10";

Flash CS5の場合は以下のように変更してください。

btObj.target = "flash-11";

FlashもFireworks同様、マクロメディア社で開発されていたため、同じJava
Scriptでも他のAdobe製品などとはかなり異なります。Fireworks同様に、ユー
ザーの環境に依存する場合があります。

前回同様、上記のスクリプトは、そのままでは動作しません。Windowsの場合
はCドライブから起動するというのがベースにあるのでいいのですが、MacOS X
の場合は起動ディスクの名称は適当に変更することができます。一般的には、
MacOS Xはディスク名を必要としないのですが、FlashもFireworksと同じよう
に、起動ディスク名を指定しないと動作しません。つまり

var diskName = "SnowLeopard"; // ルートドライブ名

のSnowLeopardの部分は、各自自分が起動しているハードディスクの名前に置
き換えてもらわなければいけません。実際にファイルを選択した時にどのよう
なパス指定になるかは、以下のスクリプトを使って確認できます。なお、ファ
イルの拡張子は.jsや.jsxではなく.jsflにしてください(Fireworksは.jsfで
Flashは.jsflと拡張子が違うので注意)。

var URI = fl.browseForFileURL("select", "Import File");
alert(URI);


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/ >

9月7日に、改訂5版JavaScriptポケットリファレンスが発売されます。
HTML5/CSS3に対応しています。
ブラウザはIE10pp2, Android 2.3, iOS4.3.3までは対応しています。
5版では4版にあったIE独自のフィルタ機能は全部削除しました。
また、ActiveX/LiveConnectの部分も削除しました。
もし、それらの部分が必要な方は4版を購入しておいてください。

・Retro Programmer【漫画】
< http://www.openspc2.org/reibun/comipo/RetroProgrammer/story01/0001/ >

・毎度おなじみASCII.jpの連載
「第4回 iPhone/iPad両対応!PhoneGapで作るアルバムアプリ」
< http://ascii.jp/elem/000/000/628/628147/ >

・Google API Expertが解説する HTML5逆引きリファレンス【発売中!!】
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844330349 >

・iPhone/iPad × HTML5アプリ制作
< http://www.amazon.co.jp/dp/4797362618 >

・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/ >

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/ >

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■データ・デザインの地平[09]
Windows Phone 7.5に見る「ヒトとコミュニケーションの形」

薬師寺 聖
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110829140100.html >
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●ヒト中心のUI、「People hub」

8月25日、Windows Phone OS 7.5 搭載のスマートフォン「IS12T」が、auから
発売されました。スマホとしては後発ですが、ソーシャルメディアが充実して
きた段階での登場です。

特筆すべきは、優れたコミュニケーション機能「People hub」。ユーザーは、
コミュニケーション相手の「ヒト」を選んだ後、メールや各種ソーシャルメデ
ィアといったコミュニケーションの「方法」を選択できます。

まだ実機をお持ちでない方は、ぜひ次の動画をご覧ください。
< http://www.youtube.com/watch?v=xdVbBXEwjcI >

Windows Phone のUIは、まさに「ヒト」ありきです。このUIを木で表現するな
ら、最上位にあるのは「ヒト」であり、コミュニケーション方法や、ヒトをカ
テゴライズするグループではありません。それは、「人間とは何か」──とい
っても、存在に対する問いかけではなく、データ・デザインにおける、この社
会での「一意なもの」の定義──を問いかけます。

「People hub」は、操作性の改善にとどまらない、革新的なコンセプトです。

●「ヒトのプロパティ」が変わっても、「ヒト」は変わらない

「ヒト」という単位が明確に打ち出されたことには大きな意味があります。デ
ータ・デザインにおいて、「ヒトのプロパティ」が変わっても同じ「ヒト」で
あるという、社会的な承認が得られるからです。

その昔、リアルなコミュニケーションが主流であった時代には、我々は、相手
と会うやいなや、おおよその年齢や性別などにより、相手をカテゴライズして
いました。また、訪問してのプレゼンのように事前に勤務先や所属などの情報
が得られると、カテゴライズしたうえで、相手に接していました。自分なりの
フィルターを通して、相手を分類していたのです。

ともすれば我々は、勤務先・学歴・性別・年齢、あるいはビジュアル、といっ
た「ヒトのプロパティ(個人情報や、外見や所作から受け取る印象)」を、
「ヒト」の存在そのものよりも重視しがちです。

しかしながら、ネット上では、そのような「ヒトのプロパティ」を知らないま
ま、交流を深めることが珍しくありません。筆者自身、面識のない編集者さん
たちと多数の書籍や記事を送りだしてきていますし、ソーシャルメディアでつ
ながっている友人のうち、面識のある人はごく一部です。このようなことは、
昨今では、珍しくありません。ハンドルネームしか知らない友人の数が、交換
した名刺の数を上回っている人も多いでしょう。

我々は、相手のプロパティを知らなくても、つながることができます。もはや
「ヒト」と「ヒトのプロパティ」のプライオリティは逆転したといっていいで
しょう。「ヒトのプロパティ」は「ヒト」に従属する属性でしかありません。
そして、「ヒトのプロパティ」が変わったからといって、我々は「ヒト」まで
変わったとは思いませんし、同じ「ヒト」として交流を続けるでしょう。

たとえば、結婚や離別、あるいは未成年の場合は親の再婚により姓が変わって
も、ヒトに従属する「姓」という情報が変わるだけで、ヒトそのものが変わる
わけではありません。性別も、ヒトに従属する情報にすぎません。性別が変わ
ったとしても、単に性別というプロパティの値が変わるだけで、「ヒト」に変
わりはありません。定年退職しても、移転しても、結婚して別世帯を築いても、
ヒトそのものは変わりません。勤務先や居住地や世帯は、ヒトに従属する情報
にすぎません。

リアル社会では、ビジネスとプライベートの境界がいっそう薄れ、ソーシャル
メディアにおいても、社員と個人の立場は混在しつつあります。節電対策の在
宅勤務が拍車をかけているのかもしれません。しかし、立場というプロパティ
に関わらず、同じ「ヒト」であることに変わりはありません。

●一意な「ヒト」であるためには、「つながる」他者が必要

我々は、ひとつの単位の「ヒト」であると認められるために、「私は私である」
と主張するだけでなく、一人以上の他者と「つながり」、他者から認められる
必要があります。

荒唐無稽な話ではありますが、地球上の全員がスマホを持っている状況を想像
してみてください。そのような社会で、今ここにいる自分の存在を叫ぶだけで、
コミュニケーション相手が一人もいなかったり、あるいは相手がいても生涯一
度も接続しなかったとしたら、そのヒトは、社会的に「一意なもの」と見なさ
れるでしょうか。

これは、「観測者のいない作品は、芸術かどうか?」という問題に似ています。
島流しにあった世阿弥の雪の中でのただ一人の舞、ヘンリ・ミラーの小説の中
で語られる密室のバイオリニストと同じ問題です。芸術ではあるが、芸術とは
認められない──、一意な存在ではあるが、社会的には一意な存在とは認めら
れない、ということになるのではないでしょうか。

既に、ユーザー認証において、携帯電話の所有の事実を、ユーザーが一意な存
在であることの判断材料としているサービスがあります。これは10年前には考
えられなかったことです。「スマホ、あるいは、ポスト・スマホによって、コ
ミュニケーション相手と、すくなくとも一度は双方向に通信を行った事実」を、
一意な「ヒト」であることの簡易証明とする方法は、デファクト・スタンダー
ドとなるかもしれません。

スマホ時代以降の「ヒト」とは、「私が認識する『私』」ではなく、相対的な
関係のなかで「(法人の担当者を含む)他者が観測可能な個体、形を識別でき
る『ひとつの物体』、まとまりのある分子たち」といえるかもしれません。そ
れは、輪郭の曖昧な「人」という言葉が冠詞なしで通用する日本語とは異なり、
名詞に可算あるいは不可算の定義付けがなされる英語圏の捉え方なのかもしれ
ません。

自他の認識が異なる場合、たとえば、ヒトの一部が物理的に変更され、ユーザ
ーが自身の連続性を認識していなくても、あるいは、センサの進化によりヒト
の思考と外部との境界が薄れたとしても、他者が一意であると見なすならば、
一意であるということになるでしょう。いずれくる「存在のデバイス化」時代
に向け、「ヒト」という単位が明確に打ち出されたことは、データ・デザイン
における、ひとつの指針となります。

●プロパティなき「つながり」が、コミュニケーションのスタイルを変える

一意な「ヒト」であるために他者とつながることが必要となれば、コミュニケ
ーションのスタイルは変わります。

いま我が国では、単身世帯が増えています。高齢化が進み、限界集落も目立ち
ます。隣近所もすべて高齢者となれば、「つながり」の事実を作るには、遠い
親戚よりも、近くの他人よりも、距離を問わない友情でしょう。10年20年経ち、
IT機器を使いきなす高齢者が増えれば、リアル訪問よりも、通信によるコミュ
ニケーションが、無縁社会での存在証明の切り札となります。

また、いまだ終息しない福島原発震災の余波で、子どもたちのために海外移住
を考える人々も出始めています。もっとも、地球環境は変わり続けており、日
本の安全な場所に、海外の人々を迎えることも考えられるかもしれません。世
界中の若い人たちは、生き残らなければなりません。これは比喩ではなく、文
字通りの意味です。安全な場所で、糧を得て生きながらえなければなりません。

故郷を離れて生きていくためには、つながるきっかけを作る力、つながりを維
持する努力が必要です。若い人々は、互いの一意性を保証し合い、万が一困っ
た時には損得抜きで寝食を提供し合える友を世界中に持たなければなりません。
そして、一度築いたつながりを絶やさないように、常日ごろからコミュニケー
ションをはかる地道な努力を続けるべきです。

天災が発生する度、ハンドルネーム以外の情報を知らない友人たちの身の安全
を、ソーシャルメディアで気づかう人々が多数います。東日本大震災から半年
近く経ち、TVでの報道が少なくなっても、互いにハンドルネームしか知らない
人々がなお、支援情報を共有、拡散しようとしています。ヒトのプロパティと
は無関係に、この社会での一意な者同士が、その存在を尊重し合い、つながろ
うとしています。

ソーシャルメディア離れもささやかれ始めてはいますが、それは、ユーザーが、
点在する大量の情報の巡回と、さほど深くはない儀礼上の付き合いに多大な時
間を費やし、浅い情報、浅い友情に、疲弊しているからにすぎません。

もちろん、友人は多い方がいいでしょう。しかし、コミュニケーションの密度
も重要です。これから先、ソーシャルメディアで表示される我々の個人情報に
は、友人の数だけではなく、コミュニケーションの拡がりと深度を表す情報も
必要とされるようになるでしょう。

そして、近い将来、世界各地に(宇宙も含めて)、点在する一意な存在たちの
新たな共同体が雨後のタケノコのように芽を出し、それらはレイヤーのように
重なり、相互にゆるく結びつき、物理的な境界を超えるものとなっていくでし
ょう。

筆者は、昨日発売されたばかりの「IS12T」を購入しました。充電しながら、
この原稿を書いています。さらに使ってみれば、多くの新しい発見があるに違
いありません。皆さんも、「People hub」を使い、ぜひ「ヒトとコミュニケー
ションの形」について、思いめぐらしてみてください。

Windows Phone 概要
< http://www.microsoft.com/ja-jp/windowsphone/ >

IS12T製品情報(KDDI)
< http://www.au.kddi.com/pr/windowsphone/ >

Windows Phone 開発者向け技術情報
< http://msdn.microsoft.com/ja-jp/windowsphone/default.aspx >

※ブログ「イメージ AndAlso ロジック」に、Windows Phone のサンプル、RIA
宣伝用のキャラクター、SVG作成体験用の簡易なフリーツールなどを掲載して
います。開発や宣伝にご利用ください。
< http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/ >

※2曲入りアルバム「Change The Brain」を、Amazon MP3(日、米、英、独)、
Mora Win、着うたフル、ほかで発売中です。
< http://lyric.seindesign.net/info/ChangeTheBrain.htm >

【薬師寺聖/個人事業所セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/ >
ブログ < http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/ >
PROJECT KySS < http://www.projectkyss.net/ >
< infosei@seindesign.net >

ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードを扱う、四国の個人事業主。科学
技術や医療・福祉分野のXML案件の企画デザインに実績があり、コラボレーシ
ョンユニットPROJECT KySS名義で、XML、RIA、.NETに関する書籍や記事、多数。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev
(Oct 2003-Sep 2011)

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■編集後記(8/29)

・ブックオフで見つけた「ゴルゴ13はいつ終わるのか? 竹熊漫談」を読む
(2005、イースト・プレス)。いまだ完結を見ぬ代表的な大河漫画をセレクト
し、その結末がどうなるのかを大胆にも予想してみる、というよけいなお世話
企画。「ゴルゴ13」「美味しんぼ」、そして「ガラスの仮面」が取り上げられ
ているが、中でも「ガラスの仮面」が秀逸。ちょうど夏休みで、文庫本の整理
をしていたら出て来た白泉社文庫版の24冊、ちょっと見始めらもう止まらない。
2日間「ガラスの仮面」漬けだ。こんな絵も物語も超アナクロの少女漫画に、
いい歳をした男が没頭するんだから、やはり竹熊の「ガラスの仮面」合法ドラ
ッグ説は正しい。「ガラスの仮面」にプロの漫画家が抱くものは、恐怖以外の
なにものでもないという分析がじつに興味深い。美内すずえが人智の限りを尽
くして限界まで盛り上げてきた大河漫画は、「描いて、描かない」エンディン
グになるであろう、理論的にこれしかないと竹熊は語る(結末を具体的に書い
ている。みごとである。本当にこれしかないと思う)。このテキストの初出は
1993年で、10年以上前の原稿を"現役"として殆ど修正なしで単行本化すると
は思わなかったと追記している。また、この結末予想を見た美内は「おもしろ
かった。でも、要するにあれよりおもしろい結末にすればいいんでしょう?」
とこともなげに語ったという。スゴ過ぎる。つまり18年前のテキストが今もま
ったく問題なく通用してしまうところが恐ろしい。でも「紅天女」っていう演
劇、難解であまり面白くなさそうなんですけど。「ガラスの仮面」は一体どん
な結末になるのか、見届けなければなるまい。長生きしなければ〜。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4872575415/dgcrcom-22/ >
→アマゾンで見る(レビュー3件)

・岡見の成長に期待!/前回書いたアンドロイド演劇は、大阪大学で開催され
た国際演劇学会の一環。来年はチリで行われる。この学会のサイトやグッズ、
パンフなどを作らせてもらった。メインイメージは武さん。ポスターやチラシ
は海外の方々にも人気で、欲しいという人が続出。武さんの線譜は近くで見る
のと、遠くで見るのとで印象が違う。その二面性が奥深さを醸し出し、観る側
が様々な解釈をしてくれる。一部を切り取ってデザインしたTシャツは、スタ
ッフの女子大生(素敵な響き)に「友達から、可愛くてスタッフTシャツに見
えないって言われたんですよ。好きです。」と言ってもらえて幸せ。で、その
学会に先生の計らいで参加。言語は英語。わからない単語だらけで頭が痛い。
ネイティブの人だと聞き取りやすいが、表現や使われる単語が難しい。非ネイ
ティブの人だと、英語は比較的簡単なのだが、癖があって聞き取れない。アフ
リカの演劇事情を聞く機会なんてないだろうと期待していたが、ホールでのス
ピーチを聞いて個別パネルは断念した。英語力欠乏を実感したので、海外で学
ばれる歌舞伎・能・狂言というテーマのパネルを選択。ネイティブ2人にポー
ランド人が1人。ポーランド人の英語は聞き取りにくかった。テーマ選択が成
功し、持ってる基礎知識のおかげでなんとなく理解できる。海外での歌舞伎や
狂言だと、演ずる(学ぶ)側に血縁や男女の区別がなくてフラット。日本だと
プロとアマチュアの差は大きいけれどとおっしゃっていた。海外版は「ハイブ
リッド」だと表現されていて、そういう考え方もあるんだなぁと。海外だと伝
統に囚われない新しい試みがしやすくて、ショパン音楽と能を融合させた
「Chopin Noh」というのも上演されたそうだ。/日本での凱旋公演もあったの
ね。知らなかった。/Windows Phone、面白そう。     (hammer.mule)
< http://nohtheatre.wordpress.com/2011/02/19/polish-japanese-noh-diplomacy-chopin-and-the-piano-tuner/ >
The Piano Tuner
< http://nourakutosha.blog105.fc2.com/blog-date-20110302.html >
観た人の感想
< http://aobanokai.exblog.jp/i41/ >
柴田稔氏

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